時計ライターという仕事柄、若い人たちから、「最初の腕時計選びはどのように選ぶのか?」という質問を受ける事があります。簡単なようで難しい質問、経験を積んだから正しく選べるか、といえばそうではありません。ただ、最低限抑えて欲しいポイントを3つばかり紹介します。ぜひ参考にしてください。

まず「機械式」か「クォーツ」かを決める

機械式時計

まず腕時計は大きく分けて「機械式時計」と「クォーツ時計」に分かれます。このはそれぞれに長所と短所があります。

機械式時計はゼンマイの駆動力(ほどける力)で歯車が針を動かします。一般的に高級時計といえば機械式時計の事です。長所としては定期的なメンテナンス・修理さえ施せば、半永久的に動き、将来資産価値が出るモデルもあります。

ただネジを長期間巻かないでいると止まるのが難点です。精度もクォーツ時計より劣り、日差で10秒近いズレが生じます。磁性体金属を使用しているため、磁気と衝撃にも弱く、パソコンの操作時やスポーツでは、それらの影響を受けないような配慮が必要です。

 

一方の「クォーツ時計」はステップモーターを電力で動かす時計になります。長所としては精度が高い(月差10秒)事と、価格の安さです。また磁気の影響を受ける事が少なく、機械式時計ほど電化製品の磁気に関して神経質になる必要はありません。

短所としては電子回路を使用しているため、動かなくなった場合回路は交換となり修理は不可能です。また電池切れに際し、一部モデルを除き予告無く止まる事があります。またほとんどのモデルで、機械式時計のような資産価値は期待できません。

腕時計の第一歩としてはこのような「機械式時計」、「クォーツ時計」どちらかを選ぶ事になります。どちらがベストかその人のライフスタイル・嗜好によって決めるのが一般的です。

ただ、腕時計選びに正解はありません。自身のライフスタイルを見つめて時計にお金をかけたく無ければ、数千円から1万円程度のクォーツ腕時計を選ぶのも良いでしょう。また本格的に費用をかけて、機械式時計を購入するのも腕時計をよく知るきっかけになります。

いずれにしても現代社会では腕時計は無くても生活はでき、困る事はまず無いでしょう。しかし不要と考える人がただ「ビジネスマナー」だけの理由で購入するのには、賛同できません。それならば初志貫徹して腕時計不要の生活をして欲しいです。

やはり腕時計を購入するには「クォーツ時計」であれ、「機械式時計」であれ目的を持ち購入するべきだと僕は考えます。目的を持ち購入すると腕時計ライフもより充実したものになり、楽しむことができます。

腕時計を使うシーンを決めると目的が絞られる!

繰り返しますがはじめて腕時計購入を検討している人は、その目的を決めるべきです。ただ、何となく購入するのは、できれば避けましょう。もし、その目的がイメージできない人は使うシーンを思い浮かべてください。

その腕時計をどんなシーンで使うか具体的に決めると、購入する時計の目的が見えてきます。例えば仕事用として、スーツに合う時計を使うならシンプルな三針時計が最適です。時間が即座にわかり、ビジネスのドレスコードにもマッチします。

休日メインでサーフィン用として使いたい人はダイバーズウォッチ、正確な時間測定をしたい人はクロノグラフなど、使うシーンを決めるだけで、腕時計は具体的に絞り込まれてきます。

あと意外に忘れがちなものが、手持ちの衣服との相性です。衣服の相性が全てマッチする万能時計はありません。腕時計購入時には、店舗での試着時に手持ちの衣服との相性を必ずチェックすると良いでしょう。

その時姿見を利用し「鏡に映し出した姿」を見ると、より理想の時計がイメージできてきます。さらに言えば優秀なスタッフさんが居るお店ほど、衣服との相性のアドバイスもしてくれて、鏡もサッと出てくる(ブティックは例外無く出てくる)ものです。

腕時計ビギナーの方が思い浮かべる腕時計の種類は、先ほどの三針時計か、クロノグラフ位だと僕は思います。しかし、最もベーシックな三針時計ひとつに注目しても、ドレスウォッチ、パイロットウォッチ、ダイバーズウォッチなど実に多彩です。

仕事が終っても使えるフォーマルかつスポーティーな時計であれば、ラグジュアリースポーツモデルと言ったように欲しいモデルの焦点が合ってきます。

このように使うシーンを細かく想定、さらに自身が所有する衣服とのコーディネートを考えると相応しい時計は自ずと絞られます。さまざまなシーンを詳細に想定して、可能であれば時計に合わせたい衣服でショップへ行くのがおすすめです。

初めに予算ありきはビギナーにありがちな間違い!

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さて、最終的に候補となる腕時計をどれかに絞り決定する、最大の要因はお金でしょう。しかし腕時計ビギナーがよく犯す過ちがお金・予算だけを注視し過ぎる事です。

初めに予算ありきの買物は、堅実な手法ですが、事腕時計の購入では、そうは言えません。特に腕時計ビギナーはもともと既知のモデル・ブランドが少なく予算だけで切り捨てると実は欲しかった製品を見逃すからです。

こんな事言うと「際限なく高価な時計が欲しくなるのでは?」と心配する人もいるかもしれません。しかし身近で時計に詳しいアドバイザーでも居ない限り、ビギナーが最初から高価な名門ブランドモデルにたどり着く可能性はまず無いと思います。

また意外と思われるでしょうが、お金は何とかなります。もし逆立ちしても払えない金額だったらすんなり諦めるしかありませんが、無理すれば払えるような金額なら、僕は絶対買うべきだと考えます。

僕も過去にロレックスREF14270 エクスプローラーを予算数万円オーバーで、諦めた経験があります。この時も僕の予算との差額は8万円程度だと記憶しています。当時このエクスプローラーはドラマで使用された事で、大ブームとなりました。

何となく「ベタ過ぎる」、そして「予算オーバー」もあって、結果当時正規価格31万円のAir-Kingを36回無金利ローンで購入しました。しかし、今思えば、月払では僅か2千円程度のアップだったのでそれどほど大きな差ではありません。

つまり無理すれば買えた時計でした。当時は予算ばかりに目がいき、肝心な時計の本質に目が全くいきわたりませんでした。このような僕と同意見(お金は何とかなる)の人は案外時計愛好家の中では多いと思います。

候補の時計がお金以外の要因(スペックやデザイン)で迷っているとしたら、その時計は諦めるべきです。しかしお金だけが購入の障害であれば無理してでも買うべきと僕は考えます。

腕時計ビギナーの予算オーバーは大抵の場合、10万円位でしょう。現金一括は現代ではありえません。乱暴な言い方ですが、ローンにしろクレジットカード払いにしても引き落とし日までにオーバーした数千円のお金を何とかすれば良いだけです。

ブランドの壁を越えるとより良い時計に出会えるかも

 

さてここでもうひとつ、ビギナーが必ずぶつかるのはブランドの壁です。どうしてもビギナーはブランドありきとなりがちですが、固執しすぎるのはよくありません。ブランドの壁を取り払い、固定概念無く選ぶ方が良い時計を選べるはずです。

ビギナーに限りませんが、腕時計の種類・数は実に多く初めからブランドありきにすると、それ以外見向きもしなくなります。ブランドの壁を越えて多くの時計を直に触れたら意外な発見をする事があります。

まずはネットである程度候補となる腕時計をピックアップし、お店で時計を直に触れて試着し購入することがおすすめです。ぜひ最高の「初めて腕時計」を見つけてください。

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