こんにちはGoroです。先日実家の79歳の母親からトケマッチ事件に関するLINEが送られてきました。事件の概要は知っていましたが、TV新聞といった媒体がワイドショー的に報道しています。中にはかなり歪んだ報道も見られるので、時計愛好家目線で見た事件の考察をまとめてみました。参考にしてください。
時計レンタルの落とし穴:トケマッチ事件からの教訓
トケマッチは愛好家の人たちなら一度は聞いた事があるか、はたまたオーナーにならないかとの要請を受けた方も居るかも知れません。不動産から高級腕時計のシェアリングサービスを営む会社の一事業で、運営者が腕時計オーナーから時計を貸し出して貰い、希望者へレンタルするサービスです。(会社HPの概要)
腕時計オーナーは貸出料を貰い、レンタルする人は運営者を通じてレンタル料を支払うビジネスモデルになります。オーナーと貸与者はウィンウィンの関係のように見えますが、そこでは高級腕時計という製品の特殊性を忘れてはいけません。報道だけ見ると、時計愛好家やコレクターが被害に遭っていると感じている人が多いと思いますが、筆者は違うと考えています。というのも時計愛好家が金策する場合、時計を売却するのが一般的です。
なぜならシェアリングサービスではどんなに良い時計でも預託料は月々数万円程度が関の山だと推測できます。この報道が出てからトケマッチの被害者は愛好家よりも投資目的の人が大半だと確信しています。このシェアリングサービスの正確な貸出料はわかりませんが、報道によるととある法人は45本の高級時計を預け月々100万円の預託料を受け取っていたとNHKの取材に答えています。
この報道から推測すると約1本あたり約22,000円です。この法人もやはり高級時計が高騰しているからという事でビジネスを始めたと語っており、投資目的でトケマッチへ時計を預けたそうです。結果預託した45本中17本が予告なく返却されてきたとの事。この報道内容から推測すると、ビジネスが上手くいかず手元にある時計だけ返却した可能性が高いです。詐欺では無く単なるビジネスの失敗だと考えられます。
失望と挫折:トケマッチ事件で垣間見た時計の闇
腕時計投資と言いますが、金融商品の投資とは全く性質が全く違うものです。そもそも腕時計は実用品という側面もありますが、筆者は趣味性の強い実用品と認識しています。そして価値や相場は極めて主観的です。また時計業界というのは決して他の業界と違い、透明性の高い市場ではありません。財務状況を公開する義務のある株式会社は少なく、伝統的に家族経営の会社が大半です。21世紀に入りラグジュアリーブランドグループ傘下に入って幾分改善されました。
しかし公開されていない部分が多い「ミステリアスさ」も時計の大きな魅力のひとつである事に疑いの余地はありません。それと一番ミステリアスな部分は価格設定(値付け)でしょう。よく一般の人から「100万円以上の時計とそれ以下の時計との違い」を聞かれる事が筆者は多くあります。これなんかはまさに時計の闇です。100万円に相応しくない時計やそれ以下の価格でもお買い得な時計は確かに存在します。(動画参考にしてください)
トケマッチの崩壊:時計投資家が知っておくべきこと
恐らく「時計の事をよく知らない方」又は「全く興味の無い人」は「時計なんかで儲かる筈無い」と思っているでしょう。それは大正解です。
ところがこのコロナ禍の金余りによって、一部の人たちは上手く短期的に売り抜き、儲けを手に入れた人も居た可能性も十分考えられます。更にその事に便乗して流説的な儲け話を耳にした人も居ると思います。
トケマッチもそんな流説の真っ只中にいて今回のビジネスモデルを思いつき実行した可能性が高いです。筆者の経験だけ言えば確かに一部モデルは長期的には価格相場は上昇しています。しかし金融商品のように中短期的な上昇を見込めるものではありません。
また価値相場の根拠も金融商品のような数字的な裏付けに乏しく、投資対象や投資商品としては、決してお勧めできるものではありません。この事は腕時計ビギナーの人は肝に銘じておくべきです。
トケマッチ事件の反省、腕時計投資は用心!
一見すると貸主と借手を繋ぐよくできたマッチング・ビジネスと見る事もできます。しかし今回のトケマッチの一番の問題点は借手が見つかる前に貸主へ時計の預託料を払っていた事です。
つまり収入を得る前に支出をしていた事で、運営が行き詰まった可能性が高いと思われます。また貸主(オーナー)側の問題も無視できません。今回筆者が見たNHKの記事のオーナーのように投資目的で新たに腕時計を購入して、トケマッチへ預託した人たちは腕時計が有望な投資手段と信じていた事です。
他で被害を訴えている人たちも多くは投資目的で購入してトケマッチに預託していると推測されます。筆者の過去記事にも記載していますが腕時計投資は金融投資よりも不確実な投資なのです。
著名な時計ジャーナリストクロノス日本版の編集長、広田氏の記事も掲載しておきます。参考にしてください。
時計市場の警鐘:トケマッチによる影響への懸念
筆者はまず、被害に遭われた人の中には投資目的では無い、純粋な時計愛好家の方も含まれていると考えています。それらの人たちにお願いしたい事は全力で時計を戻すための声を叫び続けて欲しいと思っています。
僕らにできることは、トケマッチ被害に遭われた人の時計が中古市場に出回っている可能性があることを理解することが必要です。それプラス筆者は時計収集という趣味に対するネガティブなイメージの広がりを恐れます。時計収集というマニアックな世界に昨今の時計相場の上昇によって、それ以外の人間達が参入してきているのも事実です。もちろん愛好家達だけで成り立つ世界ではありませんが、あまりにも時計本来の楽しみを蔑ろにするのは許せません。
腕時計は趣味!色々な意見を交わし楽しむ世界です。これを否定することだけはやめて欲しいと筆者は切に願います。