こんにちは、Goroです。前回の記事に引き続き会社の同僚が持っているヴィンテージモデルにスポットを当てるシリーズ、今回はCartier Santos(カルティエ・サントス)。この時計は暫くクローゼットの奥に眠っていたと聞きました。今回はそのSantosの魅力について解説します。

時代を映す輝き:Cartier Santosヴィンテージの美学

2001年頃製造されたCartier Santos。W20057C4と推測

今回フォーカスするモデルはSantos、このモデルは世界初の腕時計と言われていて、Cartierの創業者であるLouis Cartier(ルイ・カルティエ)が友人Alberto Santos-Dumont(アルベルト・サントス・デュモン) からの依頼で、造られた時計ですAlberto Santos-Dumontは当時の懐中時計(ポケットウォッチ)は、航空機の操縦桿操作時の時間確認を不便に感じていて、友人であった宝石商Louis Cartier(ルイ・カルティエ)に腕に巻く時計の依頼をしたそうです。

 

そして1904年に完成したCartier Santosは世界初の実用腕時計として、リリースされます。デザインは珍しいスクエア(四角形)の形状でした。これまでの懐中時計は現代同様にケースは丸型でした。この形状にしたのは、手首にフィットするためにスクエアにした説が有力です。当時の航空機は現代のような密閉されたコクピットでは無く、バイクのように風が入る構造になっていました。

 

その事も想定して、宝石商Cartierのアイディアも加味してこのフォルムに落ち着いた可能性が高いです。また宝石同様に、多角形にカットしてリングの台座にフィットさせるように時計も手首へフィットさせる事は、Cartierには容易い事だったと想像できます。この2人が当時議論を重ねて生まれたアイディア(スクエアな形状のケース)は、時代を経てCartierの時計を代表するアイコニックなモデルとして現代愛好家達を魅了し続けています。

Cartierの公式HPより。鉛筆書きのスケッチが今も残っている。

 

TOP写真のW20057C4は、会社の同僚が香港へのフライト時に香港で購入したヴィンテージのSantosです。外観のフォルムは不変ですが、ダイアルは現行モデルには無い手の込んだギョシェ加工を施しています。またデイト表示も5時(正確には4時とのインデックスに窓を設けている事が特徴です。Santosのこれまでのモデルでは、デイト表示は6時又は3時がほとんどになります。

 

またCartierの針は全てブルースティールという贅沢さも見逃せません。これは現行品も同じで全製品を対象にしていることが特徴です。

 

腕時計の宝石:Cartier Santosヴィンテージの装飾的な精巧さ

拡大すると、ダイアルの良さが際立つ!

実用性を追求したSantosですが、ジュエリーブランドらしい装飾的な美しさも忘れてはいません。前述したブルースティールは防蝕も大きな目的ですが、神秘的な青色に美しく仕上がる事で、各ブランドが採用している可能性が高いです。ギョシェ加工も反射を防ぎ視認性を高めるよりも装飾的な加工の意味合いが強い技法になります。この2つの技法は時計製造で古くから伝わる古典的な加工法です。そして意外な盲点はベゼル周りのイエローゴールドになります。

 

腕時計にイエローゴールドを採用する事を嫌う地域があるのも事実です。しかしここ数年はゴールドを採用するブランドが増加中しています。また製造的な観点で見ると明らかに単一素材で仕上げる方が理にかなっています。しかしは、古の時代より神聖視される金属である事も見逃せません。グローバルビジネスを展開するラグジュアリー・ブランドにとって、嗜好の違いはあるにせよ世界中から歓迎されるを採用する事はある意味不可欠なのかも知れません。

 

そしてイエローゴールドをSantosに違和感無くデザインとして腕時計へ落とし込むのは、Cartierにとってさほど難しくはない技法です。

 

クラフトマンシップの極致:Cartier Santosヴィンテージモデルの製造プロセス

Cartierの現在の工場。クロノスのWEBよりさながら電子工場

 

このSantosが出た1990年末から2000年代の初頭は、Cartierにとっても転換期であった事は間違いありません。まずクォーツ全盛だった時代は終焉を迎えて、クォーツの雄であったSeikoもGrand-Seikoのラインナップに1998年に機械式時計を復活させています。Cartierも2001年に同社の時計工場を2001年にラ・ショー・ド・フォンに新設しました。その後同社の時計工場は拡張を繰り返し、2022年にはさながら最新鋭のエレクトロニクスの工場のような佇まいです。(クロノスの記事を参照してください

 

ただこの写真のモデルが出た当時は工場も新設したばかりで、現代のような量産化体制はできておりません。しかし現代でもハンドクラフトの技法は継承している事が特徴です。それが前述した青焼きと呼ばれるブルースティール針になります。残念ながら現行品にはW20057C4で使われたギョーシェはなくなりましたが、サンレイ仕上げ、ラッカー仕上げなど伝統的な手法も軽視していません。

 

時を越えるスタイル:Cartier Santosヴィンテージのファッションへの影響

 

現行モデルW2SA0016の公式写真、シグニチャーであるブルースティールは健在

 

ヴィンテージと言ってもCartierの良さは古びないデザインにあると言えると思います。Santosは原型こそそのままですが、ディテールは時代に合わせて変化しています。Cartierの良さは技術的な革新をデザインへ上手く取り入れて現代の消費者の要求に適応させている事が特徴です。すぐ上の写真の現行品モデルはW20057C4とほぼ同じレディースモデルのイエローゴールドになります。2000年初頭のモデルと比較するとベゼル部分をスクエアから八角形に変化させ全体の印象を縦長へと見せる工夫を施しています。

 

これはブレスレットとの一体感を強調させた印象を持たせて、よりスポーティーな仕上げにしている事が特徴です。現代的なデザインの変化を加えつつもシグニチャーである伝統的な放射状のローマン・インデックスはそのままです。また縦長に見せつつも風防はスクエアを保ち、見事に過去との融合を実現させています。100年を経過しても全く違和感無くモダンな時計であり続ける事はさすがです。

 

この時計はどんなに時間が経過してもアイコニックなレディースウォッチとして君臨すると筆者は予想しています。

腕時計選びに迷っているエレガントな女性は迷う事無く、Cartierの腕時計を選んでください。きっと素敵なタイムピースになるはずです。

上部へスクロール