こんにちは、Goroです。この記事は僕が依頼を受けているクライアントさんのサイトで書いた記事をブログ用に書き直したものです。メジャーリーガー大谷翔平がドジャース入団時に付けていた腕時計がグランドセイコーという事で話題になりました。しかし、筆者はそのことで新たな驚きを発見をしたのです。では詳しく紹介します。

広いアメリカで役立つGMT機能!

https://www.grand-seiko.com/jp-ja/collections/sbgm221(グランドセイコー公式HPより)

このモデルの独創性は、緩やかなカーブを描くかん足の側面に入れた斜面にある(公式HPより引用)

 

さて入団会見で、大谷選手が左手にしていた腕時計が話題となりました。彼が入団会見時に装着していた時計はたぶん、SBGM221でしょう。

GMT機能を持った、時計は広いアメリカを日常的に横断するメジャーリーガーは確かに重宝する時計です。恐らくそれもこの時計をチョイスした理由の一つでしょう。アメリカでは東西で最大3時間(アラスカとハワイを除く)の時差があります。

 

GMT機能が付いた時計は、ロレックスが1955年に開発したGMTマスターが最初です。ご存知の方も多いでしょうが、同社がパンアメリカン航空の「太平洋路線向けに乗務するパイロット用」として開発された機能です。現代のようなGPSは無いため、腕時計が飛行中の位置情報の割り出しに重要な役割を果たしていました。特に長距離旅客機の場合、出発地時刻と到着時刻が異なるため飛行中に瞬時にそれぞれの時刻がわかる方が都合が良かったのです。

 

グランドセイコー:四半世紀を経ても色褪せない曲線美の理由に迫る

筆者の過去記事にもあるようにグランドセイコーは精度や時計のパフォーマンスはスイス時計と比較しても遜色有りません。特にSBGM221は外観もシンプルでかつクラシカルであるため、アイコニックなフォルムに好感を持てます。またダイアルもアイボリー色という優しい色調も大谷選手のイメージと重なります。アイボリーという色には「優雅さ」、「上品さ」、また「信頼性」を見ている人たちに与えると言われます。

 

このSBGM221は個人的にはすごく好感を持っていたモデルでした。しかし、このモデルに実はずっと違和感を感じていたのも事実です。他のグランドセイコーとは何かが違うという違和感をずっと感じていました。

SBGM221と同じ小杉修弘氏が1990年代にデザインしたSBGR001(私物写真)グランドセイコーにしては、曲線美を強調したモデル

そして、同じ違和感を筆者の同僚から見せて頂いた、SBGR001にも感じていたのです。その両者の共通点に気づいたのは、この記事を書き始めてからでした。なんとデザイナーが同じ小杉修弘氏だったのです。

 

 

セイコーHPより、小杉氏画像

角張った印象が強いのがグランドセイコーDNA、それを損なわずに緩やかな曲線をプロダクトに織り込むデザインが氏のデザインの真骨頂だと筆者は感じます。1998年製のSBGR001もまさにそれを体現したものでした。

 

そしてその美しさは1998年から約20年以上経過した現在も変わらず色褪せません。尚このSBGR001に関する詳細は筆者のブログか、Fortza-Styleの筆者記事を参照してください。

 

なぜ、大谷翔平は、グランドセイコーを選んだのか?

ドジャース イメージ 画像Unsplashより

一流のアスリートに高級時計を望む人たちが一定数いるのは、事実です。中には時計を見てリラックスする、長谷部誠氏のようなアスリートも(筆者の過去記事参照)居ます。

 

SBGM221とSBGR001現代の名工に選ばれた小杉修弘氏がデザインした時計で、これだけでも買う価値がある時計です。さらにグランドセイコーの世界に誇れる技術、ザラツ研磨というスイスブランドではあまり見られない下地処理をする手法も見逃せません。これはエッジを立たせる事で、より時計の立体感を強調する仕上げです。

 

このザラツ研磨は実はスイスの会社から輸入した研磨機に由来する技術なのですが、スイスでは一般的になりませんでした。この手法で研磨したケースの面は歪みが無く、鏡面仕上げした際に歪みが殆どないため、まさに鏡のように映像が映し出されます。通常の鏡面仕上げでは映し出された映像が歪み、例えば文字の場合読み取りができません。しかし、ザラツ研磨を施した時計ケースでは文字がハッキリと映し出され読み取る事ができます。さらに下地がしっかりと処理されているため、経年劣化してもコーティング剤を塗るだけで、簡単に光沢を蘇らせる事が可能です。(リンク先参照

 

ではなぜ大谷翔平が入団会見でグランドセイコーSBGM221を選んだのか?筆者は間違いなく自分自身の考えで選んだと確信しています。もしスポンサー絡みならハッキリ背景にスポンサー名を出すはずです。入団会見の様々な写真を見る限り、ドジャースのロゴ以外は見当たりません。通常球団絡みの製品を宣伝として使う時は、スポンサー名をメディアのカメラに映す工夫をするのが一般的です。

 

「セイコーは大谷翔平のスポンサーだから、グランドセイコーもその絡み!」という意見もあるでしょうが、ブランドアンバサダーというのは契約が無いと使われる事はありません。その実例として、筆者も以前仕事の関係でグランドセイコーブティックでの撮影時(私は不参加でした)、「隣接するセイコーショップの大谷翔平の画像を写らないように!」と言われた記憶があります。

 

大谷翔平はグランドセイコーのアンバサダーには現時点では就任できない?

とはいえ、同じ資本関係があり、今回の入団時の映像の影響で将来的にグランドセイコーのキャラクターに就任する可能性もあります。しかし、筆者は大谷翔平選手がグランドセイコーのキャラクターに就任する事は現時点では無い!と考えます。理由の一つがグランドセイコーが2017年に独立ブランド化する事をバーゼルワールド(当時世界最大の時計の見本市)で発表した事です。

 

この事を当時のCEO服部真二氏(現セイコーグループ会長)が世界中の時計ジャーナリストへ向けて発表したのです。この2017年を境にグランドセイコーの時計の文字盤12時からSEIKOの文字が消えて、全てGrand Seiko表記に統一されました。ただ、これだけでグランドセイコーがブランドとして、世界に認知されたのかと言えばそうではありません。グランドセイコーの独立宣言以降、グランドセイコーのブランドとしての価値は高まりましたが、まだ道半ばというのが実態でしょう。

 

しかしグランドセイコーの時計の品質や機械性能が世界基準で見た場合、彼らのレベルは極めて高いです。乱暴な言い方をすれば、スイス時計の機械性能はグランドセイコーより劣ります。しかし世界的な評価で客観的に比較した時、両者の差は歴然としています。

スイス製腕時計の評価が高い理由は、スイス製腕時計がブランド化されているからです。多くの日本人が信じている高品質=ブランドは世界では通用しません。ブランドとして認知されるのは高い信頼性です。

 

ブランディングで重要なのは一貫性、品質ではない

 

例えば日差10秒以内のムーブメントの性能が8秒になっても実用性に違いがあるわけではありません。消費者は精度が高い製品よりも信頼性の高い企業の製品を購入します。その信頼性を高めることが、ブランディングです。ブランディングは日々の企業活動でも構築できますが、時間がかかり、宣伝活動で即人々に訴求する事もできます。つまり企業自身も積極的にアピールや信頼性を高める活動をしないと、無駄な時間(非効率)を費やすことになるのです。

 

ブランディングで特に重要なのは一貫性です。グランドセイコーを世界ブランドにするために、2017年の世界戦略路線を維持し続けて、日本国内市場は世界市場(グローバル)の一部という姿勢を第一に考えなければいけません。

 

まとめ

大谷翔平選手は確かに世界的に有名にはなりましたが、あくまで年棒が世界レベルになった事のみです。大谷翔平を起用できる環境にあるセイコーグループですが、筆者は敢えて起用しないと考えています。現時点でセイコーグループは、グランドセイコーのブランディング化に必要なのは、アスリートでは無いと考えているのでしょう。

 

ただ、今後スポーツモデルを大量投入してくる時は大谷翔平をキャラクターにする可能性もあると思います。

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