こんにちはGoroです。ロレックスが、デイトナ(ル・マン100周年記念)のアニバーサリーモデルを発表しました。速報で流れた時は「ポールニューマン」モデルを彷彿させる「パンダ・ダイヤル」が話題を呼びました。様々な憶測が流れる中、このモデルを発表した理由を僕なりに検証してみます。

ロレックス・デイトナとは?

デイトナ ロレックス
1904年から1935年のデイトナビーチのコース。砂浜を利用したコースが特徴

 

https://www.rolex.com/ja/about-rolex-watches/history/1953-1967

さて、ロレックス・デイトナとはどんなモデルなのでしょう。正式名称はコスモグラフ・デイトナで通称デイトナと呼ばれています。ストップウォッチ機能を備えたクロノグラフで、ロレックスの中でも最も人気が高いラインナップです。

 

デイトナ以前もロレックスは手巻きクロノグラフモデルを輩出していますが、初期のコレクションにはデイトナという名称は使われていません。これはホディンキーのサイトで詳しくまとめられていますから参照してください。(ホディンキーの記事を参照)

デイトナ以前は1950年代に発表されていたオイスター・クロノグラフと呼ばれるモデルで、デイトナのようなスポーティーさでは無く、ドレスウォッチのテイストを兼ね備えたフォーマルな装いのクロノグラフでした。

 

その後、1960年代に入りタキメーターがベゼルへ移動したスポーティーなテイストのクロノグラフが登場、その後1963年から「デイトナ」のネームが記載されるようになったのです。デイトナはアメリカの街の地名で歴史あるレース場があり、そこで開催されるレースの副賞として、ロレックスが「コスモグラフデイトナ」を優勝者へ複勝として寄贈していました。とは言えそのモデルが市場で人気だった訳ではありません。

当初ロレックスはクロノグラフを苦手にしていた?

 

https://www.pexels.com/ja-jp/photo/3771129/

デイトナ黎明期の「手巻きムーブメント」は当時の最新の技術を備えたクロノグラフではありません。1969年にはゼニス、タグホイヤー連合(ハミルトンとブライトリング)から最新鋭の「自動巻きクロノグラフ・ムーブメント」が発表され、クロノグラフにも自動巻きの波が押し寄せます。当時のロレックスはなぜかクロノグラフムーブメントだけが自社開発できていない状況でした。手巻きクロノグラフムーブメントはバルジューのムーブメントをベースにした機構を採用していたのです。

 

オイスターパーペチュアル」という自動巻きムーブメントを推し進めるロレックスにしては、クロノグラフだけなぜか、ムーブメントの自社開発は後手に回っていました。結局1988年のref6263とref6265まで、手巻きムーブメントは生産され続け、同年にやっとにロレックス初の自動巻きクロノグラフを発表しますが、ムーブメントはゼニス社から買いつけたエル・プリメロを搭載していました。ロレックスの自社製ムーブメント2000年まで待つことになります。

ポールニューマンによってデイトナはブレイク!

デイトナ ロレックス ポールニューマンモデル
ロレックス社公式HPより、ポールニューマンモデル。黒白でパンダのようになっている事が特徴です。

 

https://www.rolex.com/ja/about-rolex-watches/history/1953-1967

決して今のようなロレックスの大人気モデルでもない当時のデイトナは、セールス的にも良くなかったらしく、店先で数年間売れなかった事もあったようです。しかしあるハリウッド俳優が着用した姿が出回った事でデイトナはブレイクしました。スティングやハスラーに出演したポール・ニューマンはこの黎明期のデイトナを愛用、自身も俳優業と並行してレーサーだった事もあってクロノグラフが彼のライフスタイルに合っていたのでしょう。

 

そして、いつしかポール・ニューマンモデルと呼ばれるようになった黒白の「パンダ・ダイヤル」は、人気が無かったゆえに希少性が高く今もオークションでは高値で落札しています。また文字盤が経年劣化によって変色(緑青により変色した文字盤)したデイトナはコレクターや愛好家に人気で、希少性が高くSotheby’sなどの著名オークションで億単位の価格で落札されています。

 

クォーツショックの終焉と共にロレックスは、自動巻きのクロノグラフの生産を計画しました。しかし自社での自動巻きのクロノグラフムーブメントの開発が間に合わず、ゼニス社からムーブメントの提供を受けて、1988年に念願の自動巻きデイトナをリリースします。現行のデイトナは優れた自社ムーブメントを搭載してロレックスの超人気コレクションとなっています。発売当初の不人気ゆえの希少性が、後の争奪戦を引き起こし、現在のようにロレックスと言えばデイトナという構図を作り上げたのかも知れません。

過去からの訣別を狙ったモデルなのか?

 

https://www.pexels.com/ja-jp/photo/5537579/

この新製品は「これまでとは明らかに違う」もので、日本における正規価格が「お問合せ」という、価格設定が今回の特徴です。ただこれが世界共通かと思えば、アメリカでは正規価格が発表されています。(ホディンキーの記事より)同様にスイスでは49,000CHF(約754万円)(SJXの記事より)と設定されているようになぜか日本の正規価格が、はっきりしていません。気になる日本での販売価格はアメリカ、スイスと同価格帯になるのか、これは円安傾向に今日本での正規価格設定は難航を極めているのでしょうか?

デイトナ ロレックス 復刻 ポールニューマンモデル
なぜか日本正規販売価格が発表されていない、新型ポールニューマン・デイトナ

 

https://www.rolex.com/ja/watches/cosmograph-daytona/m126529ln-0001

オイスターケースがこれまでのステンレス鋼では無く、ホワイトゴールドを採用しているため、従来からあった、プラトナモデルと同じ価格帯になると予想できます。

 

もしかしたら、ロレックスは自社の価格帯を「手の届く高級時計ブランド」から脱却して「プレステージ・ブランド」へのステップアップを目論んでいるかも知れません。しかしこればかりはブランドの幹部のみ知る事、真実はどうなんでしょう?

 

もう一つ考えられる事は過去のクロノグラフの歴史からの訣別です。

 

今回の「ル・マン」モデルには積算計が従来の12時間では無く、24時間まで計測できるようになっています。(ロレックスのHPより)自社ムーブメントcal4130を搭載したこのモデルは最新の技術を備えたムーブメントを搭載していると言っても過言ではありません。デイトナ黎明期は他社の技術を使わなければいけなかった時代はもう過去の物であり、他社の追随を許さない優秀なムーブメントはロレックスのマイルストーン的なモデルとも言うことができます。

 

ぜひ実機を見てみたいですね。筆者のロレックス過去記事も参照してください。

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