こんにちはGoroです。2024年もF1シーズンが終了、2025シーズンからLVMHグループが、フォーミュラーワン(F1)とグローバル・パートナー契約を2024年に締結しました。グループを代表する時計ブランドはタグホイヤーとアイルトン・セナを思い浮かべるはずです。今日はそんな両者の関係を、詳しく紹介します。
父からセナへ、贈られたタグホイヤー
現在Netflix(ネフリ)で、アイルトンセナのドキュメンタリー番組を配信中です。冒頭に登場した、ホイヤーのクロノグラフでした。セナはカートで南米チャンピオンになった後に、ポルトガルで開催された、カートの世界選手権に参加するまで腕を磨き上げます。その後のステップアップを検討していた所、当時F1の登竜門であった、フォーミュラフォードでヨーロッパを目指します。
しかし参戦の費用で、セナは父と遠征と費用の交渉をするのです。
セナの強い意志に共感した父は遠征費用のため、車の売却と1年間のヨーロッパ行きを許可しました。その時、父が所有していた、ホイヤーのクロノグラフをセナに渡しました。
この時計があれば、ブラジルの時間がわかると微笑んでHeuer(ホイヤー:現タグホイヤー)3645をセナにプレゼントします。
不条理さと戦ってきた、セナ
父はヨーロッパへ行くに際して、様々な条件をつけます。セナの父は家業を行いながら、大学に通い、レースを続けることを提案します。しかし、セナは頑なにヨーロッパ行きを主張するのです。セナは幼少期から故郷のブラジルでカートレースに勤しんでいました。裕福な家庭に育った彼でしたが、最初からレーサーを目指していた訳ではありません。幼少期より車に興味を持ち、セナの父は彼の気持ちを抑えること無く、カートをさせたようです。
負けず嫌いのセナはカートを走らせるだけではなく、徹底的に勝ちに拘る少年でした。車にも詳しく、エンジン音を聞くだけでどの部分に問題があるということもわかるほど並外れた感性を持っていたのです。順調にキャリアを重ねたセナは南米チャンピオンになります。その後にポルトガルで開催されたカートの世界選手権に出場したセナは、決勝レースで優勝したにも関わらず、総合2位になるという不可解な判定を受けます。
ここで受けた不可解な判定が、彼のその後のレーサーとしての原動力になったとドキュメンタリーでは紹介していました。
カートでの時間計測に使用したクロノグラフ
ドキュメンタリーの冒頭では、このHeuer3648(もしくは3645)が度々登場します。セナの父はカートでセナのタイムをこのHeuer3645で計測して、喜びを爆発させます。このセナの父がプレゼントした、Heuer3648は通称:プレ・カレラと呼ばれ1960年代のモデルです。イエローゴールドのケースとシルバーのダイアルとのコントラストが美しく、上品なクロノグラフになります。
ムーブメントは手巻きバルジュー(Valjoux)92を搭載しており、この後数年後にクロノグラフは自動巻きへと進化する手巻きムーブメント最終世代のモデルです。タキメーターがついていないモデルゆえ、36㎜でも視認性に優れています。ブラウンのレザーストラップとの色の組み合わせもよく、現代のクロノグラフでは見られないエレガントさが、この時代のクロノグラフの魅力です。
セナの父は実業家で、職場ではデスクワークの傍らにこのホイヤーの時計を腕に、仕事をしていました。
現代のクロノグラフは上の写真のような、スポーティーさを前面に出したモデルが、ほとんどです。このHeuer3648は、古き良きクロノグラフの伝統を継承した、美しさが時計全体に溢れています。
スピードという魔物に取り憑かれた、セナ
アイルトンセナは、筆者が20代の頃初めて見たフォーミュラ1(F1)で、日本人初のフルシーズンドライバー、中嶋悟氏のチームメイトでした。当時筆者のF1の知識は、皆無でF1はバブルで余ったお金の流れる所というイメージがありました。素人目に見ても中嶋悟氏とセナの違いは、理解できます。同じマシンでもセナのピットインの回数は中嶋悟氏より少なく、セナの方がタイヤに負担をかけない走りが特徴です。
セナのアクセルワークが他のドライバーと違うという記事を専門誌で読みました。実際、雨天では、唯一ドライバーの技量がそのまま発揮できます。セナを有名にしたのが、1984年のモナコでした。予選では13位だったセナがトップのアラン・プロストの差を周回毎に縮め、後り数周で逆転の所でレースはなぜか中断して終了、物議を醸しました。
「無名のトールマンというチームの、無名の南米人の車」が「名誉あるモナコで優勝しては困る」、当時の絶対的王者プロストに主催者が忖度したと思われても不思議ではありません。レインマスターと呼ばれたセナのドライビングが、周知の事実になった瞬間でした。
しかしセナは、いつの日からドライビングテクニックよりもスピードを追求するようになります。勝負に拘るセナは結局レースには、絶対的なスピードが無いといけないと気付いたのかも知れません。セナがスピードという魔物に取り憑かれたエピソードがドキュメンタリーの中にも何度か登場します。
さらにセナはレースで優勝するよりも、ポールポジション(PP)を取ることが圧倒的に多いドライバーでした。ご存知かも知れませんが、PPをいくら多く取ってもポイントにはなりません。PPはあくまでも、スターティング・グリッドの場所を決めるだけにしかすぎません。モナコのようにPPを取る事がレースの勝敗を大きく分けるレース会場もありますが、コースによっては予選2位の方が有利な位置でコーナーに入れるコースもあります。
またセナは2位を大きく引き離してもレースをプッシュ(攻める)し続けたレースも多くありました。
その結果マシンに負担がかかり過ぎて、レースの途中でマシンが壊れて途中棄権することも多いレーサーでした。どんなに無線で「ペースを落とせ」とチームオーダーが来ても、セナはアクセルを緩めず、後続車両をどんどん引き離す事が有名でした。
2025シーズン、タグホイヤーはクロノグラフに注力?
さて、実はフォーミュラーワン(F1)の腕時計のグローバルパートナーはここ15年近く、ロレックスでした。しかし2024年LVMHグループがロレックスの契約額の推定3倍とも言われる金額を提示して、10年契約で新たなグローバルパートナー契約に成功したのです。
LVMHグループには時計ブランドは複数ありますが、一般的に考えると2025年からはレース会場にタグホイヤーのブランドロゴが溢れる事が予想されます。それに合わせセナのロゴも会場に溢れる事も間違いありません。
そして筆者は2025年からLVMHグループがクロノグラフに注力してくることを予想しています。前年まで腕時計ブランドはミニマル化を推し進めていました。機能はシンプルでダイアルも小型化したドレスウォッチやフォーマルウォッチが、24年のウォッチ&ワンダーズでも見られました。
タグホイヤーは若い層が顧客層です。もしF1をきっかけにして、クロノグラフのリーズナブルな新作を投入したら、未来への投資ができます。汎用クロノグラフのムーブメントで機能は最小限にして、ラバーストラップのクロノグラフだと今の時代に合うかもしれません。価格をできるだけ抑え、外観はカラフルなブラジル国旗のカラーがおすすめです。ムーブメントには、手巻きクロノグラフを採用すれば薄く仕上がります。名機バルジュー7753をベースにした新型ムーブメントを搭載すると良いかも知れません。
タグホイヤーのレーシング・クロノグラフ歴史
タグホイヤーは前身のホイヤー社の頃より、カーレースに情熱を傾けてきたブランドです。同社の歴史は、クロノグラフの進化と同じような歩みをしてきています。
西暦 |
内容 |
関連情報 |
1860年 |
スイスで、ジャックホイヤーにて創業 |
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1822年 |
最初のクロノグラフの特許所得 |
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1916年 |
1/100秒を計測できるクロノグラフを発表 |
ミクログラフ |
1963年 |
カレラ初代モデル(手巻きクロノグラフ)を発表 |
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1969年 |
3社連合により自動巻クロノグラフムーブメントを発表 |
プロジェクト99 |
1970年 |
自動巻クロノグラフを搭載したモナコを発表 |
1960年代後半より、スイス時計界にはクォーツムーブメントによる影響が始まってきた時期で、次世代のクロノグラフムーブメントの開発が急務だと、時計関係者たちは気付いていました。
その危機感の中、ホイヤー社のジャックホイヤーがデュボア・デプラと共に開発を始めて、後にホイヤーがブライトリング社の当時の社長、ウィリー・ブライトリングに声をかけて、3社による共同開発が始まります。
秘密裏に開発をスタートさせていましたがスイスでは同時期にゼニス社が、そして海の向こう側ではセイコー社が同様のプロジェクトを進行していたのでした。
参考記事はこちら。
セナの遺産を未来へ、LVMH参入がもたらすタグホイヤーとセナの物語
タグホイヤーに目指して欲しいことは、セナの意志を未来へ語り継ぐことです。セナがレースで受けた悔しい想いは、風化しないでということです。F1は人種、性別、国籍によって差別を受けてはいけません。セナが居た頃は、今以上にモータースポーツの中心はヨーロッパ、レーサーもヨーロッパ人でなければいけない風潮は強かったはずです。
セナが幼少期にポルトガルで受けた判定、鈴鹿でのプロストとのシケインでの衝突とその後の納得のいかない失格がありました。
現代のF1も24戦中11戦の舞台がヨーロッパです。F1の中心がヨーロッパであることは紛れもない事実です。LVMHはヨーロッパのラグジュアリーブランド・グループですが、比較的新興グループに属します。所属している時計ブランドも様々です。名門が多いですが、保守的な時計造りとは、一線を画している事に好感を持てます。タグホイヤーもゼニスも伝統を活かしつつ、新しい試みを好むブランドたちです。
まとめ
タグホイヤーはラインナップとバリエーションを多く揃え、店舗販売より、オンラインにウェイトを置いている印象を受けます。ラインナップを多くすることは、ECサイト運営において重要です。
一般的にECサイトでは爆発的に売れるヒット商品より、ロングセラー商品の方が好まれます。ECサイトは、敷地が限られている店舗と違い多くの在庫が持てることが特徴です。また店舗販売と違い、商品を集約して効率の良い運営ができます。
タグホイヤーは従来のラグジュアリーブランドとは異なり、「希少・入手困難」という手法は取りません。ヨーロッパではF1は多くの人たちが熱狂するスポーツです。日本ではF1は、お金持ちという印象を抱く人が多く見られます。しかしレースに投資する人たちがお金持ちであって、それ以外は一般大衆が熱狂するエンターテイメントでもあることは忘れてはいけません。タグホイヤーの公式HPでも、WE ARE BACK という文言になっています。
ブランドとして多くのレースに携わってきたタグホイヤーの熱意が感じられる公式HPのトップ画面です。レースの会場に多くのブランドロゴとアイルトンセナの肖像画が見られるかも知れません。
2025年タグホイヤーが、サーキットにどのように戻ってくるか楽しみです。
クロノス日本版「タグホイヤー2025年からF1の公式タイムキーパーにカムバック」